2012年6月11日月曜日

日本旅行医学会 認定医

日本旅行医学会 認定医試験

6月10日(日)に日本旅行医学会の認定医試験を受講してきました。
旅行医学の書籍や感染症などを一通り復習してから参加しました。

場所は東京医科大学
教室に入ると満席状態で、若い先生からベテランの先生まで参加されていました。

日本旅行医学会は、世界でも最大規模の会員数の旅行医学の学会です。
アウトドア、救急、感染症など様々な分野を含んでいます。

テストは、様々な問題があり、微生物、全身状態の把握など
幅広い知識を問われる試験でした。
ダイビングに関する医学では潜水病が問題になります。
ダイビングをやったことのある方なら知っていますが、潜れる
深さとライセンスは決まっています。

ダイビングをするにあたっては肺機能(肺活量、一秒率)と循環機能、
Metsの評価が大事です!

減圧症になってしまった場合には軽症で2日以上、重症では1~2週間
以上あける必要があり、航空機に乗る場合にも数日の期間が必要です。
(程度などによって異なるので専門の診断が必要です)

減圧症の治療としては、高圧酸素療法があり、個人で入れるものと、
複数人で入れるものがあります。個人で入るものはかなり密閉空間です^^;


海外旅行での死亡は、1位が疾病で、自殺、交通事故と続きます。
脳疾患、心疾患、精神疾患などが問題になってきます。

そのため、旅行前の医療機関での健康チェックが重要です。
最近では64式CTなどがあり、かなり詳細に調べることが出来ます。
トレッドミル負荷心電図など基本的な検査も重要です。

旅行医学は、どうしても英語とはきっても切り離せません。
医学部や歯学部等に入学出来ている時点で、平均に比べて
英語が特別弱いということはないですが、それでも
全員が英語の論文をさらっと読めるわけではありません。

英文書カルテの書き方としては、A4で1枚に重要な順に書くこと
大切ということで、経時的ではないです!

薬などを持ち込む際にも英文での医師の処方箋があると
トラブルを回避できます(成分名:一般名)を書く必要があります。

海外では、アレルギー情報などがなかったり未成年は親の承諾書が
ないと事実上の診療拒否の危険性もあるそうです。
アレルギーがない場合にも「無いことを書くことが大切」です。

お昼休みにはマイラン製薬様の商品名:エピペンの講習会もありました。
食物アレルギーやハチなどにアレルギーを持っている場合に
医師の処方により、自らエピネフリンを打つことが出来るというものです。
アナフィラキシー状態の場合にはまずエピネフリンが
ファーストチョイスなので、かなり心強いですね!
使い方も簡単で、キャップを外して握って大腿部に打ち、
5秒程度そのまま維持し、その後、少しもむというものです。
(処方する医師も患者さんも医療機関での確認が必要です)

http://www.mylan.co.jp/ マイラン製薬


発熱と下痢についても講義があり、とても楽しみにしていた講義でした。
自分自身、カナダ、アメリカ、オーストラリア、ニュージーランド、
イギリス、フランス、イタリアと旅をしてきて最近では、アジアが多いです。
中国、香港、マカオ、シンガポール、マレーシア、インドネシアなど。

感染症の旅行中の死亡例は数パーセントと割合的には大きくないものの、
それでも注意が必要で、特に東南アジアは近年旅行者が多く、
もともと熱帯・亜熱帯地域が多いので注意が必要です。

よくインドを旅行すると必ず下痢になる。

ということは旅行者の間では、けっこう噂として存在します。
下痢になると大幅な予定変更になるので、重要な問題です。

下痢の原因は硬水、油分、香辛料、アルコール、ストレスなどのほか
細菌やウイルスによるものがあります。

血性下痢がみられれば赤痢や、サルモネラ、カンピロバクター、
なければ大腸菌、ウイルス(ノロウイルス、ロタウイルス)、マラリアなどもあります。

また、日本では少ない寄生虫感染もありえます(ジアルジア等)

下痢になったからといって下痢止めを使うことによって
菌の排出が遅れる場合もあります(医師判断要)

水や塩分、栄養を十分に取り、整腸剤や時には抗生物質が使われます。
(素人判断ではなく、十分な知識をもった医師の診察が必要です)

抗生物質はクラビット(ニューキノロン系)、
ジプロキサン(ニューキノロン系)、アジスロマイシン(マクロライド系)など
原因菌によって使い分けられます。

また、

海外旅行に行って熱が出た時には常にマラリアを考えよ
(除外できるまで頭にいれておく必要がある)

ということをよく聞きます。

マラリアは4つの型に分けられ、特に危険な熱帯型
2日おきに発熱する四日熱型、1日おきに発熱する三日熱卵型があります。


マラリアは発熱、貧血、脾腫
デング熱は発熱、疼痛、皮疹

というのは国家試験に出題されます。

特にマラリアについては、医師以外の、歯科医師、看護師も
医学常識として授業が行われています。

デング熱は東南アジアにありふれており、タイ、インド、
フィリピン、インドネシアなどで流行することがあります。

ネッタイシアカ、ヒトスジシマカという蚊が媒介しており、
潜伏期は5日。

実は、このデング熱を媒介する蚊は日本にもいて
ハワイやバリ島でも流行したことがあります。

対症療法はアセトアミノフェン
アスピリンやNSAIDsは禁忌です。

一度、日本に上陸するとかなり怖いですね。
ウエストナイル熱にしてもこのデング熱にしても、
気温が温かくなって亜熱帯・熱帯化すると今まで姿を
現わさなかった恐い微生物が牙を向いてきます。

このようなときに備えて、日本全国様々な場所で
勉強会やセミナーが開かれているんですね。

また、狂犬病についても最近は現実的なレベルで
旅行者が犬に咬まれたなど被害にあっています。

未だにバリ島のビーチでは非常事態宣言が出ています。
狂犬病はイヌだけと思っていると危険です。
ネコ、コウモリ、リスなど哺乳類に感染します。

インドでは年間少なくとも3万人が死亡しています。
狂犬病は発症すると治療方法がなく、100%死亡します。

つまり、発症したらどうしようもありません。
そのために、予防ワクチンが必要となりますが、日本での
ワクチンは免疫獲得まで6か月必要です(海外では1か月)

また、この狂犬病のワクチンや免疫グロブリンは日本では
ほとんど手に入りません。
(これは日本以外の国なども同様で、シンガポールなど
から接種・取り寄せすることがあります。

患者がいる。いないに関わらず、先進国として
あらゆる危険性に備えて備蓄することが必要だと個人的には思います。

狂犬病の恐れがある哺乳類にかまれてしまったら、流水、石鹸で
十分に洗い流し、70%エタノール、ポビドンヨードなどと塗布後、
ワクチンの暴露後接種、皮膚を貫通している場合などは
免疫グロブリンなども十分に検討する必要があるということです。


帰国後の発熱。
先日、シンガポールを経由して、ジョグジャカルタに行ってきました。
帰りには、羽田空港にて遠隔で体温を測る検査を検疫官
方が行っていました。旅行中の発熱は風邪のことが多いですが、

マラリア、デング熱、腸チフス、急性肝炎、インフルエンザなど
様々な可能性もあるので注意が必要です。

また、下痢などでは複数の微生物が混合感染している可能性もあります!

細菌+リケッチア+寄生虫 など

このような場合には専門医療機関にて治療することが重要です。

航空機に搭乗していると、体調が悪くなる方がいらっしゃいます。
航空機の中は2400メートル付近(富士山五合目)、湿度は
5~15パーセントとサハラ砂漠とほとんど変わりません。

そのため、感染、ロングフライト症候群、心疾患、肺疾患などの
リスクがあります。
また、妊娠中の方などは妊娠初期・妊娠後期は注意が必要で、
航空機会社、医師の意見を参考に搭乗の可否を決定することが必要です。
(MEDIF:Medical information form)

また、高山病の講義もありました。
高山病といえば富士山に登ったりといったことばかりを考えてしまいますが、
そうではありません!

世界列車の旅などでは中国、スイスなどで時には高度5000メートルの
山の間を移動することもあります。
また、世界遺産マチュピチュなど南米も高地があります。

高山病と一口に言っても山酔い(AMS:Acute Mountain Sickness)や、
高所肺水腫、高所脳浮腫に分けられています。

高山病を防ぐには、体をその場所に適応することが大切で、
頭痛、吐き気、嘔吐、食欲低下、めまいなどがあれば注意が必要です。
レイク・ルイーズ高山病 判定スコアなどがあります。

高所肺水腫、高所脳浮腫ともに時には死に至る危険な状態で、
下山・酸素吸入・薬など対処が必要です。
兆候を検査するつぎ足歩行試験、指-鼻-指試験などがあるそうです。

薬はアセタゾラミド、デキサメタゾン、ニフェジピン、現地の薬
などがあり、症状によって処方が必要となります。

日本旅行医学会ではアセタゾラミド(商品名:ダイアモックス)の
予防投与(半錠、1日2回)の処方例を紹介しています。
(一部の医療機関で、保険診療ではなく、自費診療で行われます)
サルファ剤アレルギーがある方は禁忌で、
ステロイドで低K、ジギタリス・カルバマゼピン、他の利尿薬などを
使用中の場合には問題になることがあるので、必ず
高山病の知識がある専門の医師から処方を受けることが大切です。


認定医試験に際して様々な講義があり、たいへん勉強になりました。

認定医の試験では、様々な問題が含まれていて、
旅行医学の最低限の土台となる内容ということですが、
他の認定医試験に比べてもかなり専門性の高い内容であると思いました。

解剖生理学スクールでは、歯科医師、
看護師、柔道整復師、あん摩マッサージ師、理学療法士などの
医療学生の方の基礎医学の講義を行っています。
(解剖学、生理学、病理学、微生物学、免疫学 等)
定期テスト前の受講も可能です。



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